振込手数料負担の攻防
賃料等の支払いについては、一般的に契約書で指定口座に振込みをすることが明記してあります。
あわせて、振込手数料は、賃借人の負担である旨も明記してあります。このことについては、特に問題はありません。
ただ、原状回復費用等を相殺して、敷金の残金が返還される場合の振込手数料となると話が変わってきます。
契約書に敷金返還の場合の振込手数料は、賃借人の負担とする旨を明記してあるものがあります。
しかし、多くの場合は退去精算書に「振込手数料を引いた金額をお振込みさせていただきます」と明記してあります。
以前に、退去立会いに同席した案件です。
退去精算の内容に合意して敷金の返金について管理会社の担当者が説明していたときのことです。
担当者が「敷金の残金から振込手数料を差し引いた金額をご返金します」と説明したことに対して、依頼人が即座にかみつきました。
「ちょっと待て!振込手数料はお金を振込む側が負担するものではないのか」
「そもそも、敷金は預けてあるお金であって、元々は俺のお金だ」
「毎月の家賃の支払いで、こちらは振込手数料を負担しているのに、なぜ、敷金の残金を取り戻すのにその手数料までも負担しなければならないのか」
「退去精算書に振込手数料を差し引いて振り込むと明記しているが、それはそちらのお願いであって義務ではないはずだ」と一気にまくしたてました。
この依頼人の言い分はもっともなことだと思いながら、このやり取りを見ておりました。
結局、依頼人の言い分が通って振込手数料の負担はなく、敷金の残金が返還されることになりました。
思えば、原状回復費用の内容に合意すると、どこかホッとしてしまい振込手数料の負担についてはあまり気にしない方がほとんどでした。
しかし、振込手数料の数百円でも納得して退去精算を終えるというのは大切だと考えさせられる立会いでした。
行政書士・敷金診断士 相武